ローマ最古の神殿

ローマ帝政時代に皇帝たちが住居を構えたパラティーノの丘。

そのパラティーノの丘にある初代皇帝アウグストゥスの邸宅跡付近で
昨年の12月、ローマ最古の神殿が発見されました。

16mほどの地下で発見された神殿は、
高さ7.5m、直径6mの円形の洞窟の中につくられたもので、
アーチ型の天井は大理石や貝殻による色彩豊かなモザイクで飾られ、
中央には白いワシのモザイク画がほぼ完璧に残されているようです。

神殿は今も地下に眠っていますが、
探査機とレザー・スキャンによって撮影された神殿の画像が
最近発表され、世界中の考古学者たちをあっと言わせました。

神殿がつくられた時期は定かではありませんが、
現存するローマの古代洞窟神殿としてはもっとも古いことが
確認されていて、紀元前12世紀から紀元5世紀の間に
幾度もの修復を繰り返し、現在に至っているようです。

古代ローマ時代、毎年2月15日に行われていた豊年祈願祭
「ルペルカリア祭」に祈りを捧げる神殿として使われていたのでは、
と言われています。

今回の発掘でもうひとつ興味深いのは、
神殿のつくられた洞窟が当時、牝オオカミによって育てられた
ローマの建国者である双子の兄弟ロムルスとレムスが
乳を与えられていた場所とされ、聖地になっていたのでは、ということ。

そして、初代皇帝アグストゥスはその付近に邸宅を構えたことで、
自ら聖地を管理していたのでは、と予測されていることです。

ローマを建国したと言われるロムルス、レムスの双子の兄弟は、
一生処女であることを義務づけられていた巫女シルヴィアと
ローマ神マルスの間にできた子供だという伝説があります。

現在のローマ南部にあるアルバーノ湖付近にあったと言われる
アルバ・ロンガという国 (シーザーの祖先も同国の出身者とされています)
の王であったシルヴィアの叔父アムリオはシルヴィアの出産に怒り、
奴隷に双子たちの暗殺を命じますが、奴隷は赤子を殺さず、
テヴェレ川に流しました。

お腹を空かせて泣きわめくカゴに乗せられた双子の赤ん坊を
見つけたのはちょうど山から水を飲みに牝オオカミでした。

牝オオカミは双子を連れ帰り、自らの乳を与え、
洞窟で育てたと言われています。

その場所に今回発見された神殿がつくられたのでは、というのです。

牝オオカミが双子に授乳する姿は現在もローマのシンボルで、
市庁舎があるカンピドリオの丘、ローマの名門ホテル
「ホテルハスラー」のロビーなど、至るところにその彫像が見られます。

フランチェスコ・ルテッリ文化大臣は今回の発見について、
「今後も発掘と修復は続けられる予定。

神殿はアウグストゥスの邸宅の一部だったのか、
神殿の修復を指揮していた彼がどの部分にどう手を入れたのか、
などの詳細を探っていくことになっている」と語っています。

アッティコ・ローマ
村本幸枝

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