なぜそこだけ早い?イタリア人

『イタリアに住んでるなんいいですね〜』
よく皆さんにそう言われますが、当然のことながら
仕事をしつつそこで暮らすのと観光で訪れるのでは
かなりの差があります。

なんで客の私が言うんだい、と思いつつも
『グラツィエ(ありがとう)』と言いながら
何も買わずに店を後にするのは私の方だし
(ほとんどの店員は無言)、トラブルがあって
電話をかけたコールセンターで感じのいい優秀な
オペレーターが対応してくれると(稀なケース)、
『完璧〜!素晴らしい!ワンダフル〜!』と
つい絶賛してしまうのも客であるはずの私の方。

メールの件名に『URGENTE (至急)』と太字で記して
送った仕事の案件に対する回答もなかなか来ないし、
レストランに入ってもメニューは待てど暮らせど
やって来ない。やっと手にしたメニューを片手に
さらに注文に来てくれるのを首を長くして待つ始末。

ここでは時間の流れ方が日本とは違うと受け入れ、
『郷に入っては郷に従え』と諦めるのが得策なのです。
英語だと『When in Rome, do as Romans do 』。
まさに『ローマではローマ人のように振舞え』って
ことですからね〜(苦笑)。

そんなわけでせっかちな性分の私はイライラさせら
れることも多いのですが、なんでここだけ早いかな、
と、腑に落ちないことがふたつあります。

そのひとつがバスや電車を下りるときのイタリア人。
なぜか彼らは下りるべき駅や停留所のひとつ前の
それに止まった時点で席を立ち、出口へと向かいます。
その際のルールとして目の前にいる人々たちに
『Scende?(下ります)?」と尋ねるのです。

さっさと出入り口が閉まってしまうイタリアで
早めに対処しておくのは正しいと思いますが、
ひとつ手前の駅で出入口に向かってしまうと
そこで下りる人、そこから乗ってくる人、
次の駅で下りる人が入り交じり、大変なカオス
を生み出すこともしばしば(苦笑)。
とは言え、最後はなんとな〜く奇麗に収まって
いるところもイタリアならではなのです。

ちなみに日本の地下鉄で『下ります? 下ります?』
と、周囲のあちらこちらに声をかけていた日本人の
友達がいて爆笑。もちろん彼女は元イタリア在住。

そして、もうひとつの『早い!』が、
レストランでお皿が下げられるスピード。

基本的に(私の観測によると)多くのことを同時に
こなすことが苦手なイタリア人。あのテーブルに
メニューを持っていったついでにそのテーブルの
オーダーを取って、その後、向こうのテーブルを
片付けて戻ろう、といった段取りができない彼等。

お水を頼めばまずはお水だけ。
ワインはその次に持って来る。
同じテーブルに何度足を運ぶことか…(苦笑)。

それなのに、
ちゃんとフォークとナイフは両端に離して置いて
あるのに、まだお皿にほんの少々だけど料理が
残っているのに『Finito?(終わった?)』の問いに
返す暇もなく、すでにウェイターの手は私のお皿
を持ち上げています。
話しに夢中で知らないうちに食べかけの料理が
目の前から消えていたことも!(怒)次の料理が
すぐに出てくるからっていう訳でもないのに!

それじゃ、伝票を持ってくるのはさぞかし早いだろう
と思いきや、これがまた遅い!払わにず帰っちゃうぞ、
と思わせるくらいに遅い!
なんでお皿を下げるのだけ早いんだろう…?
長年、イタリアに暮らしつつも未だに謎がとけない
ことのひとつです(大げさ?)。

アッティコ・ローマ
村本幸枝