イタリア原発再開の危機を脱出

ベルルスコーニ首相が未来へ向けてのエネルギー革命と
銘打って、イタリアにおける原発再開の意向を表明した
のは3年前のことでした。

イタリアの国民は、チェレノブイリの原発事故後、
1987年、投票によって原発完全廃止を勝ち取り、
それまで国内に4基あった原発は1990年を最後に
全面停止となったのです。

そんな歴史的背景があるため首相による原発再開の発言
が、国民の間に多くの物議を醸し出したことは言うまで
もありません。でも、押しの強いベルルスコーニ首相。

まずは国民を説得する必要があるとして、
『これほど環境に優しいエネルギーづくりはない』
『フランスではたくさんの恩恵を受けられることから
住民が自分の街に原発をつくってほしいと頼むほど』
『光熱費が下がり、国民の生活が楽になります!』
『最新技術で安全を100%確保します』など、
様々な場で原発の必要性と素晴らしさを訴えてきました。

2013年までには第一号基の建設に着手すると公言し、
プーチン大統領との会談により、ロシアでの冷却エン
ジン開発など、具体的な計画まで浮上していました。
二人の国のトップは原発を足がかりにアフリカへの
利権的進出の思惑があったとも言われています。

反対派の中には『ベルルスコーニ政権は2013年まで
保たないから大丈夫』との意見もありました。

イタリアの国民投票は一定の数以上の署名が集められ、
しかるべき機関の認証を得ることで実施が決まります。

そして、今回 (6/12, 13)4項目についての国民投票
が行われました。その内のひとつが原発について。
投票率は約55%。内、実に9割以上のイタリア人が
『原発NO』と訴えたのでした。

1987年に継ぎ、24年経った今も、イタリア国民の多くは
原発に頼らない国でありたいとの意思を確認したわけです。
報道されているとおり、イタリアにとっては、まさに
『歴史に残る瞬間 (momento storico)』だと思います。

しかし、今まで『押しの一手』で聞く耳を持たなかった
首相に『Addio nucleare (さらば原発)』と言わせたのが、
福島の原発事故になろうとは誰が想像したでしょう…。

何はともあれ、
イタリアで原発再開が阻止されたのは喜ばしいことです。

そして日本に、
『歴史に残る瞬間』が訪れるのは一体いつなのでしょう?

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原発に頼ることの意味

アッティコ 村本幸枝