イタリアの魅力

ローマ サンピエトロ駅(ヴァチカン)前からヴェネチア広場
へ向かう移動中のバスから目にした光景。それは、遠い昔、
私がイタリアへ来た当時を思い出させるものでした。

若かったし経験も少ない私は何を見ても驚きの連続(笑)。
そのひとつが「制服(公)」に対する意識の違いでした。

シスター(尼僧)とおばさんのケンカ。
二人とも自分の車を停めて保険の書類を引っ張りだし、
身振り手振りで言い争っていたので、多分、接触事故を
起こしたのだと思うのですが、それがバスから見た光景
でした。シスターに食って掛かるおばさんの様子から
シスターがおばさんの車に後ろから突っ込んだ模様。

今にも取っ組み合いになりそうな勢いの中で
シスターも負けてない!

長年、暮らすイタリアの日常の中で、今となっては
そんなの当たり前と、目に留まらない光景でも、
あらためて考えるとやっぱり日本とは違うなぁ…と。

それまでの私が持っていたシスターのイメージは、
神に仕え、どんな時も感情を表に出さない、
悟りを開いている(またはそのように見える)人
だったからです。

信号もなく無秩序に四方八方から車が走ってきて、
思い思いの方向へと流れていくヴェネチア広場で
ぽんこつ車に乗ったシスター4人が勢いよく果敢に
運転をしながら消えて行く姿を見たときも然り。

ローマの空港で巡回中のカラビニエーリ(軍警察官)が
バールの鏡の前でゆっくりと360度回転しながら
ナルシスト的に自分チェックをしていた姿もそうでした。

街なかで勤務中の警察官が、
若く美しいブロンドの外国人旅行客が通り過ぎる際、
『Bella!(美しい!イイ女!)』と声をかけるのもそう。

制服ではないけれど、スペイン広場で記念撮影を
していた花嫁が撮影の合間にタバコをふかしていた、
という話しも印象的 (これは休暇で遊びに来た私の
妹が実際に目にしてびっくりした光景…笑)。

それを『ゆるくていいな〜』と捉えるか、
『公の場では態度を慎むべきよね〜』と考えるか、
個人によって見解が異なるのは当然だと思いますが、
いい悪いは別として、まずは個々があって自分を
取り巻く社会が存在する(関わる)、というのが、
イタリア人的な考え方なのでしょうね。

60歳だってビキニ着て浜辺を歩いているし、
出っ腹をさらしつつのローライズだって平気だし、
ぶっとい二の腕も気にせずさらしているし。

それを見苦しいと判断するのはまた個人の問題で
あって、本人がそれでよしとしているならよし、
まわりもそれでOK、というのは楽と言えば楽ですよね。
それもある意味、イタリアの魅力のひとつかと…。

アッティコ・ローマ
村本幸枝